ミュージカル 王家の紋章

舞台観劇にはまり出したのは2010年からなのですが、ノートを書き始めたのがこの王家の紋章からだったので、ここからスタートします。

うーん、ここから始めるのがなんとも言えないんですが…
正直、物凄くつまらなかったです(笑)
自分の観劇史に残るほどにw

私が観たのは2017年なので再演なんですよね。
再演する、つまりは人気があった=面白い
って思いません?普通。
好きな役者さんが出てたのでチケットも何枚か購入し、めちゃくちゃ楽しみにしてたんですよ。

原作の漫画も読んだ事なかったので読みました。
4巻までが舞台の内容だと聞いてたので4巻まで。
少女漫画はほとんど読まないのでコッテコテの少女漫画!に多少思うところはありつつ、漫画としては普通に楽しめましたね。

そして舞台へ…


開始10分ほどで嫌な予感がし始めます(笑)
自分の中のセンサーが反応し、それを受け流しつつしばらく集中します。

でもダメでした。
センサーを無視出来ないぐらいに面白くないんです(笑)
面白くないポイントがありすぎてどこから書けばいいのか迷うほどに。。

ざっと書き出してみると

セットが取ってつけた感
場面転換が下手くそ
王が歩きすぎ
役者のステージングが下手くそ
出会いや感情の動きが不自然
場面の作り方が下手くそ
照明がダサい
原作と違うエンディング


要は、脚本の作り方が下手くそで演出がダサくセンスがないんですよ。

ストーリーとしては、
古代エジプトにタイムスリップしたアメリカ人の少女キャロルが、エジプトの王であるメンフィスに出会いそのメンフィスから求愛され、エジプトの敵国の王子イズミルはキャロルを利用しようとするが、イズミルもまたキャロルを愛して…みたいな、簡単に言うと2国の王から取り合いになる少女の話。
メンフィスの姉でありメンフィスを愛するアイシスの呪いでタイムスリップするわけなのですが。。

まずメンフィスとキャロルの出会いが不自然すぎて観てて「え~~」ってなりました。
人が沢山いる中でメンフィスがキャロルに声を掛ける場面、なんで声掛けたの?ってぐらい不自然。
古代エジプトではありえないブロンドの髪の毛は隠してたはず。
何が気になって声掛けたのか分かりませんでした。
しかも声を掛けるタイミング(間)が悪い。
キャロルが歩き出して3歩ぐらいしか進んでないのに、え?もう見つけたの?って。。
何か目立った事をしたわけでもないのに無理矢理出会わせた感満載でした。


メンフィスがキャロルを好きになる気持ちも、キャロルがメンフィスに惹かれていく気持ちも、そしてイズミルがキャロルを好きになる気持ちも描き方が雑すぎて「は?なんで?」の連続。
原作ではちゃんと描かれてるだけに、全く説得力なし。
イズミルに至ってはキャロルを鞭でしごいてたのに、いきなりキス!
もう訳が分かりません(笑)


あと、ビックリした演出が…
途中、アイシスイズミルの妹ミタムンを焼き殺す場面があるのですが、どう表現したと思います?
特大の赤いモール(針金の回りにフワフワが付いてるやつ)を体に絡めたんですよ。
体に巻き付けて燃えてます~って。
え?嘘でしょ?なになに?これ笑う場面かな?って思いました(笑)
真剣に考えた結果の演出がこれ?と。
あまりにもチープであまりにも安易な発想です。
それ故アイシスの残忍さも全く伝わりませんでした(原作ではかなり残酷に描かれてます)
この舞台以降、火を表現する作品にいくつか出会いましたけど、こんな子ども騙しみたいなやり方は王家だけです。

そしてこの焼け死んだミタムンの亡霊が色んな場面で登場する事になるのですが、全く意味がないんです。
ん?あなたは何をしてるのかな?って(笑)
しかも生きてる人間と同じ高さでフラフラ歩いてるから目障りで(笑)
とにかく何がしたいのか分からない登場のさせ方ばかりでした。

メンフィスとイズミルの対決場面では、他にもうじゃうじゃ周りに人物がいて初めて観た時2人が対決してる事に気付きませんでした(笑)
メインになるのは2人ですよ、他の人間どうにかしろよと。。
(対決の時の殺陣がまたダサかった)
メンフィスが一人で歌を歌う場面でも、後ろでチョロチョロ踊るセチの姿が邪魔で邪魔で…。

結局場面の作り方が下手くそなので、ここでは誰を見せたいのか、何を見せたいのかが明確でなく何がしたいのか分からないところだらけ。

メンフィス、イズミル、ライアン兄さんの3人が三角形のポジションで立ちキャロルに対する想いを歌う場面も、セットが何もない(メンフィスだけ謎の台に乗っている)ステージで照明の色をそれぞれ青、紫、水色?に後ろから当てて違う所にいますよ~みたいにしてるんですけど、またそれがダサい(笑)
おまけに歌い終わった後歩いて捌けて行ってダサさに拍車をかけてました。
キャロルを想うそれぞれの気持ちを対比させたかったのでしょうけど、露骨な対比すぎて本当にダサくて安っぽい。

セットがあまりなく、終始照明に頼りがちのこの舞台、色で敵と味方を分けてみたりやたらバックライトを使用したり(後ろからの照明)演出だけでなく照明もダサいんですよ。
今まで観た舞台の中で照明ダサダサ対決があったらグランプリ獲れるぐらい(笑)

ま、照明の話はさておき、
謎の演出がまだまだあります(笑)

イズミルとの対決の場面では、途中で「危ない!」とキャロルがメンフィスを守ろうと飛び出してきて背中を切られるんですよね。
えーー!なんで出てきたん?と心でツッコミましたね(笑)
どう考えてもメンフィスはそこまでのピンチではないんです。
むしろ反撃できたんじゃ?と。
キャロルが邪魔でしかなかったです(笑)
イズミルイズミルでそのまま去って行くんですけどそれにも、えーーー!です(笑)
(確かに原作もこんな感じなんです。
でも原作では本当にメンフィスがピンチでしたしキャロルの気持ちも見えてて納得できたのですけど、緩い演出すぎて、はぁ?しかなかったです)

その後場面が変わってセットの階段に座るメンフィスとキャロルがキス…いやいやいや、キャロル背中ザックリ切られてるからそれどころじゃないで!って思いました(笑)
おまけにその座ってる階段のセットが、明るい空間の中舞台上手に少し移動。。。しかも2人にスポット当たったまま。
それにも、え!!とビックリでした。
明るい中少ししか動かさないのなら、始めからその場所にセットできるような演出にすればいいのに…と。

メンフィスとキャロルが船に乗り舞台袖に捌けていく場面では、乗ってる船がペラペラの板で作られていて(立体的な物でなく船を模した板が立ってるだけ)それを人が動かし抱き合った2人が捌けていく…どこのお遊戯会かな?となりました。

その捌けていくセットに関して、ある場面で少し大きめの階段を舞台袖に移動させるのですが、カラカラカラとキャスターの音が聞こえたんですよね。
これにはドン引きしました。
何回か観ても必ず同じ場面の移動で聞こえるんですよ。
場面転換のない舞台もありますけど、転換がある舞台でキャスターの音が聞こえるってまあないです(笑)
だいたいが音楽でかき消すか、音自体しません。
プロとしてこれでいいのか?と。

そしてラスト、メンフィスとキャロルがめでたく結婚!!
原作自体は今現在も続いてるので舞台用に変えたのでしょうが、あまりにも捻りのない結婚というラストに何も感想がなかったです。
うちの母はその場面がラストだという事にも気付いておらず「これで終わりやで」って耳打ちしたぐらいでした(笑)

何故ラストが分からなかったか。
それは演出が下手くそだから、これに尽きると思います。
照明のダサさや役者のステージングの悪さと関連してくるのですが、ラストにくるまでにあらゆる場面で派手な照明と沢山の人を出して盛り上げてた為、最後の盛り上がりが霞んだんだと思います。


結局この舞台の何が一番ダメだったのか。
原作の漫画をある意味そのまま表現したところにあると思います。
漫画では受け入れられても、実際に人が壁ドンしてたら引きません?
漫画だから許される台詞や行動をそのまま立体化したら、ただただ寒く不自然なだけです。
もう忘れましたけど、台詞が臭くてギョッとする場面が沢山ありました(笑)
立体化する、目の前で人が演じる時は現実味を持たせないと説得力に欠けるペラペラの舞台になります。
紙の上で平面で描く漫画と立体的空間での舞台、同じ表現で通用するわけがないと思います。
原作が大切にしてる部分を読み取って、台詞や演出で肉付けし厚みをもたせる事はできなかったのかな?と。
本当に安っぽさしか目立たない舞台でしたね。

脚本も演出もセンスがない、若しくは適当に作ってるとしか私は感じませんでした。
突貫工事ミュージカルですね。
それぞれの役柄の見せ場もわざとらしく、舞台の世界では有名キャストが集められてたのでそれに配慮したから無意味な場面として出来上がった印象でした。

本当はまだまだあるのですが疲れたのでこの辺で(笑)


ただ、楽曲が良かったのでそこだけは救いでした。
あとアイシスを演じた濱田めぐみさん、この方の存在も私にとって救いとなりました。
劇場を包み込むような圧倒的な歌声、アイシスの感情として心にめちゃくちゃ届きました。
イズミル役の平方元基さんの芝居と歌も個人的に好きでしたね~。

後にこの王家はDVDにもなったようで、ジャケットをネットで目にし、そのダサさに笑いました(笑)
ジャケットまでダサいんか~い、と。

今では笑い話ですが、当時はあまりにも面白くなかったので返金して欲しいほどに腹が立ってました。
最後は、心でツッコミながら笑うという見方に変えてダメージを軽減してましたけど。
この作品を良かった~って感じた方、何が良かったのか教えて欲しいです(笑)


教訓として、この演出家の作品は二度と観ないと心に決めた次第です。



[補足]
原作で登場するキャロルを想うジミーが舞台では出て来ず、現代代表としてキャロルの兄ライアンが古代からキャロルを取り戻そうと度々登場するんですが…
出てこなくて良かったです(笑)


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